『教養のイタリア近現代史』

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教養のイタリア近現代史』(土肥秀行/山手昌樹編、2017年刊)

イタリアの社会、文化、政治などが、21章のテーマ別にコンパクトにまとめられた1冊です。『バザーリアと精神保健改革』(鈴木鉄忠)、『鉄道』(山手昌樹)、『知の工房としての公共図書館』(髙橋春奈)など、これまで大々的に取り上げられることが少なかったテーマに1章が割かれているのが本書の特徴です。

たとえば、『バザーリアと精神保健改革』を扱った章では、精神病院の閉鎖を成し遂げたイタリアの精神保健改革とはどのようなものだったのか、そうした大改革を主導した精神科医フランコ・バザーリアとはどのような人物だったのか、精神病院とはどんな特徴をもった施設なのか、ということなどが端的に記されています。

この章の執筆者である鈴木鉄忠氏は、かつてバザーリアが大改革を成し遂げた町トリエステで留学生活を送り、研鑽を積まれました。『バザーリアと精神保健改革』の章で、改革の土壌としてのトリエステの歴史的、文化的な特徴(この町に縁のある文学者たちが紹介されています)に触れることを忘れていないのは、トリエステに暮らした経験を持ち、この町を熟知している鈴木氏ならではと言えるでしょう。

各章のテーマは、それぞれの分野の専門家が、最新の研究を踏まえて記述しています。また各章の末尾には、基本文献が掲載されているので、本書を足掛かりとして、スムーズに研究を進めていけるようになっています。イタリアをより多面的に、より深く理解したいと思っている読者には、おススメの1冊です。

 

 

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