精神病院をなくしたイタリアのいま(8月2日(木)朝日新聞)

8月2日(木)の朝日新聞の記事で、「精神病院をなくしたイタリア」の現状が、大きく紹介された。40年前、イタリアは世界に先駆けて精神病院を全廃し、地域で患者の治療を行うことを選んだ。〈病の治療に本当に必要なものは何か〉、こうした根本的な問いに、実践を通じて向き合い続けた末の答えだった。

記事では、トリエステにある患者のための一時宿泊施設が紹介されている。海岸に近い高級ホテルに隣接する施設には、個室が6部屋あるという。部屋は施錠されておらず、患者さんが外出する時には、看護師やスタッフが付き添っている。

症状が重い時(クライシスといわれる状態)にはどうするのか。その場合には、一般病院のなかの精神科病棟への入院が認められているが、平均の入院日数は1週間ほどだという。(日本の精神科の平均在院日数は、300日ともいわれている)また、日本では日常的に行われている拘束も、イタリアでは厳しく制限されている。「拘束では状態は良くならず、つらい記憶だけが残る。。。」といったイタリアの精神科医の話が、記事のなかで紹介されている。

しかし、イタリアの取り組みにも地域差がある。特にイタリアの南部では、患者の入院は必要だと考える医師も多く、実質的に長期入院が行われることもあるという。

さらに、記事では、病院から地域サービスへの転換について、「患者の家族を置き去りにする為の改革だ」といって批判する、右派「同盟」の党首サルビーニ副首相のケースも紹介されている。40年前に精神病院を廃絶したイタリアでさえ、問題は単純ではない。

ともあれ、病の治療にとって、本当に必要なものは何なのか? (精神病院は本当に必要なのか? 長期入院は必要なのか? 拘束は必要なのか?・・・) 日本の精神医療はこのままで良いのか、あるいはどのように改善させていくべきなのか、といったことを考えてみるとき、日本と対極にある精神医療を実践するイタリアは、今後も大きなヒントを与え続けてくれるだろう。

朝日新聞デジタル180802PsichiatriaItaliana[1]